ラーメンの麺の特徴を決定づける重要な要素「加水率」をご存じでしょうか。
加水率は製麺時の小麦粉と水の割合によって決まります。
製麺や麺を選ぶときには加水率を知っておくと便利でしょう。
そのため、この記事では加水率ごとの麺の特徴を紹介します。
ラーメンの麺の主原料は小麦粉と水
ラーメンの麺(中華麺)は、何を使って製麺するのでしょうか?
製麺所によってさまざまな副材料を使用して製麺することがありますが、主原料は小麦粉と水です。
ラーメンの麺を製麺するときには通常、コシを出すためにグルテンが多く含まれる強力粉や準強力粉、中力粉が使われています。
麺に独特の食感や風味を出すために使われるアルカリ性の食品添加物「かんすい」を加えることも少なくありません。
かんすいは食品添加物とはいえ、食品安全委員会によると健康への影響は見られないとされていますが、添加物を極力摂取したくない方向けにかんすいを含まない麺を製造しているメーカーもあります。
風味を良くしたり、日持ちを良くしたりするために、小麦粉と水以外の材料が含まれる場合がありますが、小麦粉と水さえあれば製麺できます。
よって、主原料である小麦粉と水の割合が麺の特徴に影響するのです。
ラーメンの特徴を決定づける麺の加水率
麺に含まれる小麦粉などの粉に対する水分の割合のことを「加水率」といいます。
麺の主原料は小麦粉と水で、小麦粉に対してどのくらいの水を加えるかによって、麺の特徴が大きく異なります。
そのため、麺を選ぶときには麺の加水率をチェックするのがおすすめ。
一般的にはラーメンの麺の加水率は30%が標準といわれており、標準よりも高い加水率の麺を「多加水率麺」、逆に加水率が低い麺を「低加水率麺」、一般的な水分量の麺を「中加水麺」といいます。
異なる加水率ごとの特徴
多加水麺と低加水麺、そして中加水麺は、それぞれどう違うのでしょうか。
この章では各麺の特徴と適したラーメンを解説します。
麺の風味や食感を味わうなら多加水麺
多加水麺は製麺の際に、35%以上の水分を加えるもので、口あたりが滑らかでモチモチとした食感に仕上がります。
水が多いためスープなどの水分をあまり吸わず伸びにくい、スープに絡みにくいという特徴も持っています。
麺そのものの食感や味を重視したいときには多加水麺を使用すると良いでしょう。
また、次のようなラーメンにおすすめです。
・味噌ラーメン
・濃厚なスープのラーメン
・醤油ラーメン
・つけ麺
・冷やし中華
尚、札幌ラーメンと喜多方ラーメンでも多加水麺がよく使用されています。
・札幌ラーメン(加水率約35〜40%)
・喜多方ラーメン(加水率約38〜42%)
・佐野ラーメン(加水率約50%)
スープと麺を絡めるなら低加水麺
製麺の際に加える水分が30%以下の低加水麺は、固めで歯ごたえのある食感に仕上がります。
小麦粉が占める割合が高いため、小麦粉の味をより強く感じられるでしょう。
水分を吸収しやすいのでスープとよく絡み、次のようなラーメンと相性が良いといわれています。
・とんこつラーメン
・塩ラーメン
低加水麺を使用している地域のラーメンは以下の通りです。
・博多ラーメン(加水率約26〜28%)
・旭川ラーメン(加水率26〜30%)
・熊本ラーメン(加水率26〜28%)
水分を吸収しやすい分、伸びやすいため細めのストレートに製麺される傾向にあります。
また、短時間で麺を食べて替え玉をするような食べ方にも向いています。
バランスのとれた中加水麺
多加水麺と低加水麺の中間に位置するといえるのが、中加水麺です。
一般的な水分量の麺で、コシや柔らかさのバランスがよく、食べやすいでしょう。
横浜家系ラーメンや荻窪ラーメンなどに使用されています。
次のようなラーメンとの相性が良いとされています。
・町中華などで見られる昔ながらのラーメン
・魚介系醤油ラーメン
多加水麺と低加水麺の製麺で使用する小麦粉の種類
小麦粉に含まれるタンパク質の量によって、麺の食感が異なるため、多加水麺と低下水面とでは異なる種類の小麦粉を使用して製麺することは少なくありません。
小麦粉に含まれるタンパク質の含有量が多ければ多いほど固い麺を作れます。
小麦粉内のタンパク質含有量は、次の順番で多くなります。
・強力粉(タンパク質含有量:約11.5~13.5%)
・準強力粉(タンパク質含有量:約10.5~11.5%)
・中力粉(タンパク質含有量:約8.5~10.5%)
・薄力粉(タンパク質含有量:約7.0~8.5%)
一般的には、多加水麺は中力粉、低加水麺は準強力粉や強力粉が使われることが多く、薄力粉は製麺ではほぼ使われません。
コラム:地域ごとによって異なる加水率
北海道や東北地方では多加水麺、九州地方では低加水麺が良く使われる傾向にあります。
これは、地域後の環境や気質が関係しているといわれており、例えば、東北地方の湿度が低い地域は乾燥しているため、高加水麺を使用しているラーメン店が多く見られます。
一方で九州地方は、気が短い人が多いといわれており、食べる時間も短いため、早く食べられる低加水麺が受け入れられやすいようです。
このように、その地域の気候や県民性によって好まれる加水率の違いが見られるのは興味深いのではないでしょうか。
製麺時に考慮したい麺の形状
ラーメンの麺は加水率だけでなく、麺の形状によっても特徴に違いが生まれます。
そのため、加水率に加えて形状も考慮して製麺したり選んだりすると良いでしょう。
大まかに分けると麺の形状には「ちぢれ麺」と「ストレート麺」があります。
ちぢれ麺
ウェーブがかった麺で、機械で圧力をかけたり手でもみほぐしたりして製麺します。
もっちりとしており食べ応えのある麺で、多加水麺を作るときにはちぢれ麺に製麺することが多く見られます。
ストレート麺
製麺機から出てきた麺に手を加えないため、真っ直ぐな形に仕上がります。
ストレート麺は食べるときには、一つの束になり隙間が生じにくいため液体をしっかりと抱え込んだ状態で、口の中まで運べます。
よって、ストレート麺の方がスープとの絡みが良いといわれていますが、必ずしもそうではありません。
なぜなら、スープの絡みやすさは加水率も影響するからです。
まとめ
麺は小麦粉と水で製麺される、非常にシンプルな食材です。
しかし、小麦粉と水の割合・加水率によって特徴が大きく変化します。
ラーメン調理人にとっては、麺の加水率は非常に重要な要素ではないでしょうか。
それに加えて、麺の形状によっても特徴が異なります。
加水率に加えて麺の形状にも目を向ければ、理想とする麺を見つけられるでしょう。